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作品短評
男の転落死は事故か?自殺か?殺人か?
カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞し、オスカー有力候補でもある本作はジュスティーヌ・トリエ監督による法廷劇。ただし法廷劇といっても白黒はっきり結論を出して万事解決というよくあるパターンではない。あくまで分析をする「解剖学」を描いたものであり、緻密に計算された非常に厚みのある作品だった。
回想シーンがなく、被告人、検察、証人、残されたあるものだけを頼りに、わたしたちも法廷で真実を探すひとりとなる。その臨場感はまさに体験型映画。転落死というひとつの出来事から、さまざまな「落下」が浮き彫りとなる。
世の中のあらゆる主観性について深く考えさせられた。結局のところ真実とは一体何なのか?観ているこちら側の心の深い部分までも解剖されたようで、恥ずかしさにも似た、なんだか妙な気持ちになった。
それにしてもザンドラ・ヒュラーの演技が圧巻。『関心領域』も早く観たい。そしてパルム・ドッグ賞受賞のスヌープ役のメッシくんの演技が素晴らしすぎた。
作品情報
映画『落下の解剖学』
監督:ジュスティーヌ・トリエ
出演:ザンドラ・ヒュラー、スワン・アルロー、ミロ・マシャド・グラネール
配給:ギャガ