FILM REVIEW

『天使の涙』堕落天使,allen Angels(1995)-Wong Kar-wai

▶︎“エモい”と言えばの映画

恋する惑星』と共に新文芸坐にて観賞。1995年のWong Kar-wai(ウォン・カーウァイ)監督作品。Christopher Doyle(クリストファー・ドイル)とのタッグ4作目であり、『恋する惑星』のストーリーの一部として考えられていたエピソードを元に製作された。

恋する惑星』に比べるとダークなイメージとハードボイルドさが強く、ちょっぴり大人向け。とはいえ、いい具合にコミカルさも散りばめられており気軽に観賞することができる。そしてやはり素晴らしいのは映像の美しさ。それはまさに「エモい」そのもの。「エモいと言えば?」と聞かれたときの返事にこの映画をを観せれば、100点満点の回答になるだろう。現代の最新のクリアな映像技術には決して出すことのできないエモくて美しい奥深い映像と、日常に溢れる取り留めのないエピソードに、令和時代のわたしたちは不思議と再び心を動かさられるのだ。

▶︎あらすじ

殺し屋、そのパートナーのエージェント、金髪女、口のきけない男、失恋女の5人の天使たちのラブストーリー。

▶︎観賞ポイント

point 1|彩度の高い色彩とクールなワイド画角などによって仕上げられたエモーショナルワールド

(c)1999, 2008 Block 2 Pictures Inc. All Rights Reserved.

「エモい」を忠実に表現する美しい映像は、ハイコントラストで黒が強めに出されており、彩度も高い。香港の夜のネオンや、Michelle Reis(ミッシェル・リー)演じるエージェントのファッション、そしてKaren Mok(カレン・モク)の金髪の女のビビッドな色合いの美しさが際立っている。広角レンズの画角も面白く、特に人物のアップや斜めのアングルが多用されており鑑賞者の心をくすぐるスパイスとして見事にパンチを効かせている。

他にも、スロー、手ブレ、モノクロなどさまざまな技法によって、まるでPVのように目で観て感じることのできる映像に仕上げられている。さすがクリストファー・ドイルとしか言いようがない。

point 2|カオスなキャラクターたち

(c)1999, 2008 Block 2 Pictures Inc. All Rights Reserved.

キャラクターは全員カオス。しかしこれがこの作品が愛され続ける重要なポイントの一つなのだ。その誰もが、自由に生きている。恋をしたり失恋したり悲しいこともあるけれど、誰一人として生きることに無理をしてはいないし、自分に正直なのだ。そんなカオスなキャラクターこそが、実はわたしたちが望むアイコニックな人間の姿なのではないのだろうか。

point 3|ラストシーン

ウォン・カーウァイ作品ならではのストーリー性のため、内容が分かりづらいという方も少なくないだろう。しかしその全てを集約し、スッと腹落ちさせてくれるのがラストのシーンだ。その超重要なラストシーンは何があっても絶対にお見逃しなく!

▼作品データ

『天使の涙』(香港)
原題:堕落天使
公開:1995年
監督・脚本:Wong Kar-wai
撮影:Christopher Doyle

▼観賞データ

新文芸坐