FILM REVIEW

『恋する惑星』重慶森林, Chungking Express(1994)-Wong Kar-wai

▶︎気付けば眉間に皺を寄せていることがあるあなたにおすすめの映画

90年代、日本でも映画やファッションを愛する若者たちの間で流行したスタイリッシュな香港映画。第14回香港電影金像奨で最優秀作品賞、最優秀監督賞、そしてTony Leung(トニー・レオン)が最優秀主演男優賞を受賞。さらにトニー・レオンは第31回金馬奨で最優秀主演男優賞も受賞している。Quentin Tarantino(クエンティン・タランティーノ)が大絶賛した作品でもある。

ストーリーも暑苦しくもなく、コミカルで、現代の若者にも受け入れられるであろう内容となっている。わたしが観に行った新文芸坐にも多くのお洒落な若者が足を運んでいた。もしかしたら公開当時よりも現代の方がウケるのでは?と思うほど。

ストーリー性よりも、視覚と聴覚で、楽しむ映画であるといって良いだろう。しかし、だからと言って薄っぺらな作品というわけではない。日常のちょっとした出会いを、リアルとお洒落(現実的な)に描いている。肩の力を抜くのにちょうどいい。

だから、気付けば眉間に皺を寄せていることがあるちょっぴりお疲れ気味のあなたにおすすめしたい。さっぱりと後味のいいこの作品を観て、また明日から適当に頑張れることを願って……。

▶︎あらすじ

刑事223号と金髪にサングラスの女、刑事633号と小食店の新人フェイのふたつの物語。

▶︎観賞ポイント

point 1|スタイリッシュな映像表現

画像出典:Yahoo!映画

この作品は視覚と聴覚から楽しませてくれる作品だ。目から耳から入ってくる感覚が、脳を通さず心に直接刺激するような、そんな風に楽しませてくれる。思いっきりブレを生かした時間の流れの表現、場所を示すための看板から始まるシーン。オレンジと赤の使い方も美しい。そして、ビルの合間から見えるコントラストの強い汚れた泣きそうな空。視覚的な見所を挙げるとキリがないほどだ。

point 2|ギャップ萌えなTony Leung(梁 朝偉/トニー・レオン)

画像出典:Yahoo!映画

『恋する惑星』といえばTony Leung(トニー・レオン)、トニー・レオンといえば『恋する惑星』という日本人は多いだろう。警察の制服でビシッとクールにきめたトニーと、衝撃的なブリーフ姿のトニーにはギャップ萌えという言葉がピタリと当てはまる。いや、もはやブリーフ姿の方がクールかもしれない。この作品を見るならば、男性も女性も性別なんて関係なく、とにかく彼は必見!

point 3|キュートなFaye Wong(王菲/フェイ・ウォン)

画像出典:Yahoo!映画

小食店で働くフェイを演じたFaye Wong(フェイ・ウォン)。可愛い!健気もいいけどツンデレも。ショートカットのヘアスタイルも、ファッションも、そして何より彼女の天然キャラ(登場人物の過半数天然キャラ)が、終始観ているこちら側の心を和ませてくれる。その姿に日常のストレスによって深くなっていく眉間の皺もいつしか消え、無意識に口角を持ち上げてくれるだろう。

point 4|心地よく耳を刺激する音楽

作中では、デニス・ブラウンの『Things in Life』、ママス&パパスの『夢のカリフォルニア』、ダイナ・ワシントンの『縁は異なもの』、フェイ・ウォン『夢中人』(クランベリーズ『ドリームス』のカバー曲)などが使用されている。

この作品が映画ファンだけでなく、お洒落な若者からも支持された理由として外れないのがこの音楽だ。誰にでも受け入れやすくかつ、洒落ている。そんな音楽がこの作品をまたワンランランク上へと押し上げていることは間違いない。

中でも多くの人々に人気があるのは下の2曲。(*以下の動画はネタバレを含みます

▼作品データ

『恋する惑星』(香港)
原題:重慶森林
公開:1994年
監督・脚本:Wong Kar-wai
撮影:Christopher Doyle/Andrew Lau
美術:William Cheung

▼観賞データ

新文芸坐

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