『Summer of 85』Été 85(2020)-François Ozon
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カール・テオドア・ドライヤーがいなくなった今、映画に奇跡は起こせない?
ビクトル・エリセ監督の31年ぶりの長編作。一昨年に東京国際映画祭で『ミツバチのささやき』を鑑賞して以来のエリセ作品は沁みた。
映画で描かれる、映画と監督と主演俳優の長い旅。(わたしが知るはずもないのに)寡作なエリセ自身の人生が重なる。
光と影のコントラスト、雨の音や波の音、鳥の囀りなど、静謐のなかに確かに響く日常の音色が美しく印象的。出演者が「座って話す」シーンがほとんどで、言葉と表情、とりわけその瞳から、映画の中の現在地にたどり着くまでの道程が現れている。アナ・トレントの瞳は大人になってもあの頃のままで、それがとてもうれしかった。「ソイ・アナ(私はアナよ)」が再びみれた瞬間には、暗い映画館でひとり、組んでいた両手を思わずぎゅっとした。
劇中劇とエンドロールで映されていたヤヌスは、「人の過去と未来」「映画の過去と未来」メタファーに。オマージュもみられ、エリセの映画愛が溢れていた。ラストもとても良かった。
映画『瞳をとじて』
公開日:2024年2月9日(金)
監督・脚本:ビクトル・エリセ
出演:マノロ・ソロ、ホセ・コロナド、アナ・トレント
字幕翻訳:原田りえ
配給:ギャガ
原題:Cerrar los ojos
英題:Close your Eyes