『クルエラ』Cruella(2021)-Craig Gillespie
acinephile
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アリ・アスター監督最新作。
悪夢をそのまま映画にしたようなサイケデリック感は、一度ハマったら抜け出せない中毒性がありわたしは好き。アスターがこれまで一貫して描いてきた「母親像」が、本作でもっとも明確に示されていたと思う。さまざまな作品のオマージュ、「M.W.」や登場人物の仕掛け、美術や映像美など、緻密に創りこまれた完成度の高さは驚異的。ただしホラー度は低めなので、ホラー好きは要注意。
不安症を抱え、幼児のまま見た目だけがおじさんになったかのような主人公のボーを演じたホアキン・フェニックスが見事。ボーというひとりの人間が、1秒ずつ積み重ね歩んできた先の現在地を完璧に表現していた。その凄さに、役のあとわたしの大好きなルーニー・マーラと子どもたちとの幸せな日常に戻れるの?と余計な心配してしまうほど。
ボーに共感できないひとにとってはただただ不快な3時間。一方でそれに共感してしまうわたしのようなものにとってはトランス状態の3時間。その違いのわけは、わたし自身が少しまえまで家族という呪縛から逃れなれないひとりであった、ということに関係しているのだろう。
『ボーはおそれている』
監督・脚本:アリ・アスター
出演:ホアキン・フェニックス、ネイサン・レイン、エイミー・ライアン、パーカー・ポージー、パティ・ルポーン
配給:ハピネットファントム・スタジオ 原題:BEAU IS AFRAID